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蛇に影を呑まれた清助

那須晴次『伝説の熊野』

稲成

 稲成村の下村の在所より離れて北へ進むと、めぐらん谷池と言う大きな池があります。その池より奥に上って山を越え北に進むと西の谷村と稲成村との界に大亀岩と言う大きな岩があります。その岩には大きな無数の洞があります。

 ここには古来大蛇が住んで居ると言い伝えられていました。今を去ること約五十年昔のことでした。稲成村の下村の百姓山本清助という大胆な人がありました。

 その人がある日草刈りに大亀岩の下に行きました。そこで草も十分刈れたのでさて帰ろうとしてひょいと上を見たところが下から二つ目の洞から大蛇が首を出して火のような赤い舌をぺろぺろ幸弄そんでいるのでした。さすがの大胆な清助じいさんキャッと叫ぶが早いか刈った草籠を捨てたまま吾家に帰ったがその日からというものは気分が悪くなって寝床について一月ほど養生したがその甲斐もなく死にました。この方面の人々は大蛇に影を呑まれたので死んだのであるといい伝えている。今だに人々はそこへ行きません。

 

(入力 てつ@み熊野ねっと

2019.7.14 UP



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