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オリンピック東京大会讃歌

佐藤春夫

オリンポス遠きギリシャの
いにしへの神々の火は
海を越え荒野(あらの)をよぎり
はるばると渡り来て
今ここに燃えにぞ燃ゆる
青春の命のかぎり
若人(わこうど)ら力つくして
この国の世界の祭
 喜ばん富士も筑波も
 はためきて五輪の旗や
 へんぽんとひるがへる
 日本の秋さはやかに

東海の我らが小島
み空より四方(よも)の海より
この星のいたるところの
すぐれたる若人迎へ
国々の旗立てならべ
万国は一つ心に
美を讃へ意気を重んず
めでたさの祭なりけり
 喜ばん富士も筑波も
 はためきて五輪の旗や
 へんぽんとひるがへる
 日本の秋さはやかに

むつまじき若人の群(むれ)
魚(うを)となり飛ぶ鳥となり
獅子となり龍馬(りゅうめ)ともなり
潔く技を争う
争ひは争ひならず
もろともに勝つも勝たぬも
手を把(と)りて笑ふたのしさ
めでたさの祭なりけり
 喜ばん富士も筑波も
 はためきて五輪の旗や
 へんぽんとひるがへる
 日本の秋さはやかに

日の光うま酒に似て
吹く風のきよらにあまく
健康はあたりを払い
頽廃はかげりだに無し
みだれたる人間の世の
厳肅と平和の場に
我ら見る力の秩序
めでたさの祭なるかな
 喜ばん富士も筑波も
 はためきて五輪の旗や
 へんぽんとひるがへる
 日本の秋はさはやかに

 

※入力者による注記
1964年10月10日の東京オリンピック開会式で歌われた歌 。
オリンピック東京大会賛歌は開会式用の(A)、閉会式用の(B)の2曲ありましたが、佐藤春夫作詞の歌は(A)。作曲は清水脩。
佐藤春夫自身はオリンピック東京大会開催の5ヶ月ほど前に亡くなりました。

 

底本:『定本 佐藤春夫全集』 第2巻、臨川書店

(入力 てつ@み熊野ねっと

2020.2.25 UP



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