新春望郷曲
佐藤春夫
紀南新聞のために
いたづらに名を追ひつかれ
さすらひにわれぞ老いぬる
風さむき都のほとり
丹鶴の本丸に立ち
紅き濤とほくつらなる
初日の出見し日はるけし
新なり思郷の思ひ
恋しさは初春ごとに
ふるさとの南の窓
紅梅は南枝咲き出で
根かたには水仙にほひ
うら山にうぐひすうたふ
底本:『定本 佐藤春夫全集』 第2巻、臨川書店
初出:1958年(昭和33年)1月1日発行の『紀南新聞』に掲載
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2015.9.3 UP