詩境湯川溫泉
佐藤春夫
あるひと湯川の入江のために名づけよと言ひ越しける時答へて天が下
浦浦のさほどにもあらぬに名のみはいとめでたげなるさはなるがなかに
このよき入江はいつまで名もあらざりしとなんききければ
なかなかに 名のらざるこそ ゆかしけれ
ゆかし潟とも呼ばば呼ばまし
底本:『定本 佐藤春夫全集』 第1巻、臨川書店
初出:未詳
1934年(昭和9年)7月5日、白水社より刊行された『閑談半日』に収録
(入力 てつ@み熊野ねっと)
2015.8.28 UP